これからドイツ語を始めてみようと
考えているあなたに

繊細な芸術に裏打ちされた理論、ドイツ語

ドイツ語は文法的にはとても難しいといわれていますが、物事の細部まで丁寧に分析し探求し、そして細かいニュアンスまで伝えるのには最適な言葉であると言われています。その証拠に、哲学者の多くはドイツ人であり、カントなどの大哲学者の著作、天才ゲーテの本などは今にいたるまで読みつがれています。またドイツ語はモーツアルトやバッハの母国語でもあり、音楽への関心をひと味違ったものに深めてくれるでしょう。

ドイツ語学習を始めるにあたって

英語の学習は小学校や中学校から始まりますし、巷には英語の言葉やフレーズや歌があふれているので、英語をそれほど熱心に勉強したことのない人にとっても、英語はすでにいくらかなじみがあると思います。
しかし、ドイツ語については事情は異なるでしょう。ドイツ語は英語に似ている、といわれることもありますが、実際に勉強してみると、ぜんぜん違う!とびっくりしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
ドイツについての情報は私たちの耳にはそれほど頻繁に届きませんし、ドイツ語の単語は英語ほどに私達の生活の中に入り込んでいないからです。

しかし、かつては今とは違って、ドイツ語がもてはやされた時期もありました。明治維新後の日本の近代化の時代です。
そのころドイツは日本が模範とした先進国であり、当時のわが国のインテリはみなドイツ語を勉強したものです。法律や医学、哲学、文学など、多くの分野において、わが国はドイツから知識を輸入しました。
ですがその後、世界の情勢の変化とともに国家間の関係も変わり、二次大戦後は、英語がドイツ語に取って代わるようになってしまったのです。
英語が主流になったその後も、しかしながら、音楽や美術、また学問的な諸領域では、昔と変わらずドイツ語が学ばれ続け、留学のためにドイツやオーストリアへ行く人も後を絶ちません。

研究のためにドイツ語を学ぶ人がいる傍らで、世界の文化に自ら親しむ傾向が強まるにつれて、ドイツ語もそのための一つの手段として注目され始めました。
たとえば、数年前からオペラがブームになっています。日本でのオペラ公演が増えただけでなく、現地でオペラを鑑賞するツアーなども常に企画されています。ご存知のように、イタリアオペラにまけずドイツオペラもすばらしく、ドイツオペラといえばモーツァルトやワーグナーがとりわけ人気です。オペラ歌手になるために勉強している人たちはもちろん原語で歌わなくてはなりませんが、もし歌手だけでなく、鑑賞者も、その原語が分かって理解度を深めることができたならもっともっとオペラを楽しめることは間違いありません。
また近年ではドイツのパンやお菓子やワインもよく街角で見かけるようになりました。製菓や製パンを勉強しに渡独する人も年々増えているようです。
スポーツの分野では2006年にドイツで開催されたワールドカップをきっかけにドイツ語を学ぶ人も増えてきました。

日本には、優れた学習教材や学習の機会があり、情報にも事欠きません。こういう状況を生かして外国語を学び、それを通じて、個々の人が世界と接触を持つことはこれからますます必要となるでしょう。
ドイツ語ができるようになれば、テレビではまだまだドイツ語ニュースは少ないものの、インターネットでドイツ語のニュースを読むこともできます。英語圏から来る情報だけに注目していると意見がどうしても偏ってしまいがちになる可能性がありますが、ドイツ語を始め他の外国語のニュースを読むことによって、より公正な視点から世界を眺めることができそうです。
また、旅行などでドイツ語圏の国々を訪れたときに、少しでもドイツ語が話せたら、現地の人とコミュニケーションをとることもできます。ドイツ人は一般的に非常に親切です。もし日本から来た旅の人が彼らの国の言葉(つまりドイツ語)を話したら、とても喜んでくれますし、旅の楽しさも倍増です。それによって心に残る思い出もできるかもしれません。

最後に、外国語を学ぶ際に心にとめておきたい言葉があります。

Wer fremde Sprachen nicht kennt,
weiß nichts von seiner eigenen.

(外国語を知らない者は、
自国の言語について何も知らない。)

これはドイツの文豪ゲーテの言葉です。グローバル化が進む中、ドイツやヨーロッパへの理解を深めるためにドイツ語を学ぶことはもちろんよいことですが、外国語を学ぶということはそれだけに終わりません。私たちは、ドイツ語(や他の外国語)を学ぶことによって、同時に「私たち自身の言語、つまり日本語とは何か」とあらためて考える機会をもつことができるのです。

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